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2009. 11. 25
新刊が出たので久しぶりに更新です。 古四王神社発行の『東門院所蔵文書』(とうもんいんしょぞうもんじょ)。 江戸時代前期から明治時代までの、秋田市寺内地区の検地帳などの古文書を解読・ 活字化して翻刻したものです。 一般読者向けではなく、あくまで研究者用です。値段も高いので、興味本位で購入する する人はいないと思いますが……(^_^;) こういう本が出版(しかも個人の手で)されるのは、大変まれなことです。莫大な時間と 経費がかかるからです。 22冊の原本の解読作業は、4人がかりで8年もの歳月をかけています。 例えば、解読依頼費用として、1人に月2万円(安すぎますが)支払ったとします。 2万円×4人×12か月×8年 ……これだけで768万円かかります。編集、印刷、製本 の費用を含めると、軽々と1千万円を突破してしまいます。どんなにもの凄いことなのか、 お分かりかと思います。 この出版が実現したのは、秋田姓氏家系研究会という民間の研究団体がボランティアに 近い形で全面協力したからなのですが、それにしてもこの出版が偉業であることに変わり はないのです。 ところで、最近は古文書解読ブームのようです。書店には古文書解読に関する本がたくさ ん並んでいます。公的図書館などが催す古文書解読講座は、すぐに定員が埋まってしま うそうです。 秋田姓氏家系研究会も古文書解読講座をずっと行っていて、私もこの春から参加させて もらっていますが、なかなか上達しません。変体仮名はどうにか読めるのですが、漢字と なると、大変です。現代の漢字教育では旧字体を学びませんからなおさらです。 例えば「与・体・旧」は「與・體・舊」です。これを崩されるのだからたまったものではありま せん。現代の中国語も、元が分からないくらい簡略化されていますが、日本はああなって ほしくないものです。 先日その古文書解読講座で失敗をしました。佐竹義和公の葬儀を扱った文書に「掛真」 という文字が出てくるのですが、ネット検索と1冊の仏教語辞典を調べただけで 「これは『けしん』と読みます」と言ってしまったのです。 「掛真」は葬儀の時に歴代の高僧や始祖の肖像を掛けることで、確かに「けしん」とも読み ます。しかし、義和公の葬儀は天徳寺(曹洞宗)で行われていますから、この場合は「かし ん」と読まなくてはならないのです。 漢字の音読みで、私たちが最もよく使用するのは「漢音」です。これは遣唐使が活躍した 頃の中国(唐)の発音に倣ったものです。ところが日本の仏教世界では、それ以前に伝え られていて漢音より古い中国南方系の呉音を使用するのが原則です。「掛」の呉音は「け」 なので、天台宗、真言宗、浄土宗、浄土真宗など、呉音を基本とする宗派では「けしん」で よいのです。 ところが、これらの宗派より後、宋の時代に伝えられた禅宗(曹洞宗・臨済宗・黄檗宗)は やはり南方系ではありますが、この時代の発音=呉音とは全く違う宋音(ややこしいです が唐音ともいいます)に倣っています。 宋音では「掛」は「くゎ」と発音するため、禅宗では「かしん」と読むのでした。 ちなみに漢音では「掛」は「かい(くゎい)」と発音します。したがって、漢和辞典で「掛」の字 を引いて、その熟語「掛軸」を見るとちゃんと「かいじく」との読みを示しています。 ああ、日々勉強です(T_T) |
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